妙蓮寺駅から徒歩1分

BLOG さかきばら歯科ブログ

インプラント6本を一度に手術できる?多数歯同時埋入と静脈内鎮静法の考え方

『怖い』『痛そう』『費用が心配』——その気持ちは自然です。
この記事では、よくある不安をひとつずつほどきながら説明します。


先日、上あごの左右の奥歯にソケットリフト(上顎洞底挙上術)を併用し、下あご右側の3部位とあわせて、計6本を同日に埋入する手術を行いました。

「6本を一度に」という言葉に、身構える方は少なくないと思います。
身体は大丈夫なのか。どれくらい腫れるのか。途中でつらくならないか。

順に整理していきます。

【「何本まで」という上限はありません】

インプラントの本数に、あらかじめ決められた上限があるわけではありません。

判断の材料になるのは、本数そのものではなく次のような点になります。

  • 全身状態が安定しているかどうか
  • 計画した位置に対して、骨の量と質が足りているか
  • 手術時間がどの程度になる見込みか
  • 術後の生活にどこまで影響を許容できるか
  • かみ合わせ全体をどう再構成するか


上あごと下あご、奥歯と前歯とでは、必要な処置も治癒の進み方も異なります。「同じ日にまとめられるか」は、これらを総合した結果として決まってくるものです。

冒頭のケースでは、上あご側に骨造成(骨を増やす処置)で骨の高さを補いながら、下あごの3部位も並行して進めました。骨の条件と全身状態が整っていたことが前提です。

【長時間の手術を支える:歯科麻酔認定医による静脈内鎮静法】

複数本の同時埋入や、埋入と骨造成・結合組織移植を一度に行う場合、手術時間はどうしても長くなります。

そこで用いるのが静脈内鎮静法です。

■どのような麻酔なのでしょうか?

腕の静脈から点滴で鎮静薬を投与し、うとうとした状態をつくる方法です。

意識が完全に消える全身麻酔とは異なり、呼びかけには反応できます。それでいて、手術中の記憶はほとんど残らないことが多いとされます。

痛みを抑える局所麻酔は、これとは別に行います。鎮静法の役割は「痛みを消すこと」ではなく、「緊張と恐怖をやわらげ、身体への負担を抑えること」にあります。

■担当を分けることに意味があります

鎮静と全身管理は、歯科麻酔認定医が受け持ちます。

執刀医は手術に専念し、呼吸・血圧・脈拍の管理は別の担当者が専任で見る。この分業により、長い手術のあいだも状態を細かく追いながら進められます。

生体管理モニターで酸素飽和度、血圧、心電図を確認しながらの実施です。AEDと酸素ボンベも手術室に常備しています。


■この方法で得られること

  • 恐怖感や緊張がやわらぎ、長時間の手術にも臨みやすくなる
  • 血圧や脈拍の変動が抑えられ、循環の状態が安定しやすくなる
  • 手術中の記憶が残りにくいため、次の治療への抵抗感が小さくなる
  • 治療を複数回に分けず、まとめて進める設計が取りやすくなる
  • 全身的な配慮を要する方でも、モニター管理のもとで対応できる


歯科治療そのものに強い苦手意識をお持ちの方にとっては、この点が大きな意味を持つこともあります。

■あわせて知っておいていただきたいこと

  • 静脈路の確保と、酸素飽和度・血圧・心電図のモニタリングを行います
  • 呼吸抑制、血圧低下、悪心などの偶発症が起こる可能性があります
  • 術前は絶飲食が必要になります
  • 当日、車・バイク・自転車の運転はできません。付き添いの方がいると安心です
  • 眠気やふらつきが残ることがあるため、当日は安静にお過ごしください
  • 全身疾患や服薬内容によっては、適応とならないことがあります


鎮静を用いれば安全が保証されるという話ではありません。侵襲の大きい手術ほど、負担を減らす選択肢として検討する意義がある——そう受け取っていただくのが正確だと思います。

【まとめて行うと、何が変わるのでしょうか】

  • 外科処置の回数が減り、治癒の期間を並行して進められる
  • 麻酔や鎮静を受ける回数が少なくなる
  • かみ合わせ全体をひとつの設計として組み立てやすい
  • 通院回数が減り、お仕事や生活への影響を抑えやすい
  • 腫れや痛みを経験する回数そのものが減る


最後の点は意外と見落とされます。2回に分ければ、腫れる期間も2回訪れることになります。1回にまとめられれば、その期間は1度で済みます。

治療期間が短縮されることもあります。ただし骨造成を併用した場合は、骨が成熟するのを待つ時間が加わるため、単純に短くなるとは限りません。

【一方で、負担は増えます】

正直にお伝えしておきたい点です。

  • 1回あたりの手術時間が長くなる
  • 術後の腫れや違和感が、広い範囲に出やすくなる
  • 全身状態の管理により配慮が求められる
  • 術後しばらくは食事に制限がかかる
  • 当日から数日間の生活に、ある程度の余裕が必要になる

「まとめたほうが必ず良い」ということではありません。体調、お仕事の都合、通院のしやすさ、そしてご本人の希望。これらを合わせて決めていくものと考えています。

分けて進めるほうが適しているケースもあります。

【慎重に判断するケース】

多数歯の同時埋入、および静脈内鎮静法の併用について、次のような場合は慎重に検討します。

  • 血糖コントロールが安定していない糖尿病の方
  • 循環器系や呼吸器系に持病がある方
  • 骨吸収抑制薬を使用中の方
  • 喫煙量が多い方
  • 歯周病の管理や清掃状態が安定していない方
  • 当日の付き添いや、帰宅後の安静を確保しにくい方


問診と検査の結果によって、本数を分ける、鎮静を用いない、別の方法を検討するといった判断をすることもあります。

【よくあるご質問】

Q、負担の大きさは、何で決まるのでしょうか?
 
A、本数そのものよりも、手術にかかる時間と、骨造成がどの範囲に及ぶかで決まります。今回のように骨造成を併用すると、その分だけ時間もかかりますし腫れの出る範囲は広がります。逆に、骨の条件が良ければ本数が多くても短時間で終わることがあります。検査画像をお見せしながら、想定される時間と術後の経過をご説明したうえで決めていきます。


Q、手術中の記憶は残りますか?

A, ほとんど残らない方が多いとされています。静脈内鎮静法は全身麻酔とは仕組みが異なり、呼びかけには応じられる状態を保ちます。それでも「気づいたら終わっていた」と感じる方が多い麻酔です。ただし効き方には個人差があり、ぼんやりと覚えている方もいらっしゃいます。


Q、静脈内鎮静法は持病があったり、薬を飲んでいても使えますか?

A、使える方が多いですが、全員ではありません。睡眠時無呼吸があるかどうかや使用する薬剤へのアレルギー、血圧などの管理状況、服用中のお薬、当日の体調を確認したうえで判断します。難しいと判断した場合は、局所麻酔のみで進める、手術を分けるなど別の方法をご提案します。


Q、手術の日は、どんな一日になりますか?

A、術前は絶飲食をお願いします。手術後は院内で回復を確認してからのお帰りです。その日は車・バイク・自転車の運転ができませんので、ご家族に迎えに来ていただくか、公共交通機関をお使いください。眠気やふらつきが残ることがあるため、帰宅後の予定は入れず、安静に過ごせる日を選んで日程を組んでください。


Q、分けて行ったほうがよいのは、どんなときですか?

A、手術時間が長くなりすぎると見込まれるとき、全身状態に不安があるとき、術後に安静を取れる日程が確保できないときです。骨の条件によっては、先に骨造成を行ってから埋入する段階的な進め方が向いていることもあります。まとめること自体が目的ではありませんので、分けたほうがよい場合はそうお伝えします。


Q、費用はどれくらいでしょうか?

A、自由診療です。1本あたりの目安は、骨造成を併用しない場合でおよそ50~58万円。今回のようにソケットリフトを併用する場合はおよそ60〜65万円、サイナスリフトを併用する場合はおよそ75〜82万円です。上部構造(かぶせ物)の種類によって、1本あたり約5万円の差が出ます。これらはいずれも、静脈内鎮静法の費用を含んだ金額です。

このほかに、術後消毒(720円〜)、型どり(6,600円)、補綴処置(5,500〜11,000円)が別途かかります。

複数本をまとめて行う場合でも、静脈内鎮静法の費用は1回分です。そのため、先にあげた金額を本数分そのまま足した金額よりはコストが下がります。実際の総額は、診査のうえで個別のお見積もりとしてお伝えしています。


Q、期間はどれくらいかかりますか?

A、骨造成を併用しないシンプルなケースで3〜4ヶ月、骨造成や骨移植を併用する場合は6ヶ月前後が目安です。骨造成を先に行って段階的に進める場合は、骨ができるのを4〜6ヶ月待ってから埋入するため、さらに長くなります。期間には個人差があり、治りの経過によって前後します。

【安全性について】

インプラント治療、骨造成、結合組織移植はいずれも外科処置です。腫れ、痛み、内出血、感染、治りの遅れ、知覚異常などのリスクがあり、また追加処置が必要になることがあります。複数本を同時に行う場合、これらの範囲は広くなる傾向があります。

静脈内鎮静法には、呼吸抑制、血圧低下、悪心などの偶発症が生じる可能性があります。術前の絶飲食、当日の運転不可といった制約があり、全身疾患や服薬内容によっては適応とならない場合があります。

治療内容・結果・治癒経過・費用・期間には個人差があります。全身状態、喫煙、糖尿病、服薬内容、歯周組織の状態によって、全員に同じ方法を適用できるわけではありません。自由診療のため、費用・期間は目安であり症例により変動します。

【監修者】

榊原 毅

日本口腔インプラント学会 専門医/日本包括的矯正歯科学会 副代表理事/日本歯周病学会 認定医/日本矯正歯科学会 会員/インビザライン認定医/厚労省認定臨床研修指導歯科医(東京科学大学 歯学部)

「不安を煽らず、できること・難しいことも含めて丁寧に説明し、納得して選べる診療を心がけています。」

【参考文献】

・日本口腔インプラント学会『口腔インプラント治療指針2024』

https://www.shika-implant.org/

・日本歯科麻酔学会

https://jdsa.jp/

・Howe MS, et al. Long-term (10-year) dental implant survival: A systematic review and sensitivity meta-analysis. J Dent, 2019.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30904559/

・厚生労働省「医療広告ガイドライン」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/kokoku/index.html

マイクロスコープを使った精密な処置から、手術室での外科処置まで院内で対応しています。適応や注意点も含めてご説明します。
ご相談予約はこちらから
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdU5GATHEmdbIswTWncPlYHhkzkeA3lTv4J7GX4SP1xYZvcWQ/viewform

アクセス:横浜駅から計8分。妙蓮寺駅を降りて徒歩1分でご来院いただけます。