歯周病があっても、先に歯周治療を行ってお口の環境を整えればインプラントが可能なことは少なくありません。感染とインプラント周囲炎を防ぎ、長期の成功につなげる方法を歯科医師監修で解説。
ネットには情報が多く、何が正しいのか不安になることもあります。とくに「歯周病がある」と言われたあとは、インプラント治療を行って良いか不安になる方もいらっしゃいます。この記事では、学会や研究の根拠も踏まえながら、患者さんの目線で解説します。
たとえば、インプラントをご希望で来院され、CTを撮影したあとに「お口の中の診査や歯周病のチェックは省きたい」と希望された方がいらっしゃいました。早く治したいというお気持ちは、よく理解できます。しかし、歯周病があると成功率が下がりやすいこと、かみ合わせや残っている歯の状態まで含めて計画を組むことが結果につながることをご説明し、検査からスタートしました。これは個人の問題というより、誰にでも起こりうるすれ違いです。
■ 「歯周病がある」と言われたら、まず知っておきたいこと
「歯周病がある=インプラントは不可」と受け止める方は多いものです。ですが実際には、「先に歯周病を整えれば可能」というケースが少なくありません。
ポイントは順番にあります。はじめに歯周病の処置でお口の状態を安定させ、そのうえでインプラントへ進みます。「言われたら終わり」ではなく、「言われたからこそ、まず整える」と考えると、進み方がはっきりします。
■ なぜ歯周病がインプラント周囲炎や失敗につながるのか(根拠から)
歯周病に注意が必要なのは、感染を防ぐためです。場面は2つに分けられます。
ひとつは、インプラントを埋入する外科処置時の感染。もうひとつは、長期にわたって生じうるインプラント周囲炎(インプラント周囲に起こる、歯周病に似た炎症)です。
インプラントには、天然歯にある歯根膜(歯と骨をつなぐクッション)がなく、歯肉との付着が弱いです。そのため、天然歯よりも感染への抵抗力が弱いと考えられています。日本歯周病学会のガイドラインでは、歯周病のある方ではインプラントの成功率が低下しやすく、インプラント周囲炎が起こりやすいと報告されています。また、歯周病の原因菌が残存歯からインプラント周囲へ伝わることも示されています。したがって、埋入前に歯周治療で細菌を減らしておくことが、長期的な成功の前提になります。海外のシステマティックレビューでも、歯周病の既往はインプラントの喪失や周囲炎のリスクを高めると示されています。
■よくある誤解
– 「人工物だから歯周病とは関係ない」→ インプラント周囲炎が起こりえます。
– 「入れれば一生安心」→ 天然歯と同様、メインテナンスが長期の予後を左右します。
– 「検査は飛ばしてすぐ入れたい」→ リスク評価や計画が不十分になりやすくなります。
■ 長期的に成功させる人・慎重に考えたい人(一般論)
以下は一般的な目安です。最終的な適否は、検査と診断で個別に評価されます。
長期的に良好に保ちやすいのは、
・歯周病が管理されて安定している方
・毎日のセルフケアに取り組める方
・喫煙していない(または禁煙に取り組める)方
・血糖コントロールなど全身の状態が落ち着いている方 など
一方で慎重に考えたいのは
・活動性の重度歯周病が整っていない方
・喫煙の習慣がある方
・血糖コントロールが不安定な糖尿病をお持ちの方
・定期的なメインテナンスの継続が難しい方 など
■費用・期間のめやすと治療ステップ
費用と期間は、お口の状態や埋入本数によって左右されます。一般的なめやすは次のとおりです。
1本あたりの費用は45万〜70万円(自由診療)で、骨造成が必要な場合は別にかかります。期間は6か月〜1年半が目安で、歯周治療や骨造成が必要なときはさらに延びることがあります。歯肉の厚みを補うCTG(結合組織移植)は、必要に応じて検討するオプションです。
治療は、検査 → 歯周治療 → 再評価 → インプラント埋入 → 上部構造(かぶせ物)の装着 → メインテナンス、という流れで進みます。最後の定期的なメインテナンスは、インプラント周囲炎を防ぎ、長く使い続けるための要となる工程です。正確な金額・期間は、検査のうえ個別のお見積もりでご確認ください。※成功率や治療結果には個人差があります。
【 よくある質問(FAQ)】
Q. 「歯周病がある」と言われました。インプラントは無理ですか?
A. 多くは、先に歯周病の検査・治療で状態を整えれば可能です。重度で活動性の場合などは慎重な判断が必要で、適否は検査のうえで決まります。結果には個人差があります。
Q. インプラント周囲炎はどんな病気ですか?防げますか?
A. インプラントの周囲に起こる、歯周病に似た炎症です。インプラントを支える骨が失われてしまいます。事前の歯周治療と、治療後の継続的なメインテナンスが予防の中心になります。
Q. 長く使い続けるためのコツはありますか?
A. システマティックレビューでは、10年生存率は96.4%と報告されています(Howe et al., 2019)。これは平均値で、喫煙・歯周病・メインテナンスの有無により個人差があります。感染対策と定期管理を続けることが、長持ちの鍵です。
Q. 歯周病があると失敗・感染のリスクは上がりますか?
A. 海外のメタアナリシスでは、歯周病の既往がインプラントの喪失や周囲炎のリスク上昇と関連すると示されています(Sgolastra et al., 2015)。そのため、事前の歯周治療と継続的なメインテナンスが重要です。
【安全性についての注記(リスク・副作用・個人差)】
– インプラント治療は外科処置を伴い、腫れ・出血・痛みのほか、まれに感染・神経の障害・上顎洞炎などが起こることがあります。
– インプラント周囲炎が生じることがあり、その予防にはメインテナンスが欠かせません。
– 歯周病・喫煙・コントロール不良の全身疾患は、感染や失敗のリスクを高める要因になりえます。
– 成功率や長期予後には個人差があり、結果を保証するものではありません。
– 本治療は自由診療です。費用は1本45万〜70万円(骨造成は別途)、期間は6か月〜1年半が一つのめやすです。
【監修者】
・榊原 毅(さかきばら たけし)
日本口腔インプラント学会 専門医/日本包括的矯正歯科学会 副代表/日本歯周病学会 認定医/インビザライン認定医/厚労省認定臨床研修指導医(東京科学大学 歯学部)
「不安を煽らず、できること・難しいことも含めて丁寧に説明し、納得して選べる診療を心がけています。」
必要な検査や選択肢を確認し、納得して進められる形を一緒に作ります。感染や周囲炎を防ぎ、長く保つための準備から。
妙蓮寺駅徒歩1分、横浜駅から約7分の通院に便利な医院です。
横浜さかきばら歯科・矯正歯科 相談予約→(https://d-sakaki.com/)
【参考文献】
1. 日本口腔インプラント学会『口腔インプラント治療指針2024』 https://www.shika-implant.org/
2. 日本歯周病学会『歯周治療のガイドライン2022』 https://www.perio.jp/
3. Sgolastra F, et al. Periodontitis, implant loss and peri-implantitis. A meta-analysis. Clin Oral Implants Res. 2015(PubMed)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24382358/
4. Howe MS, et al. Long-term (10-year) dental implant survival: A systematic review and sensitivity meta-analysis. 2019(PubMed)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30904559/
5. European Federation of Periodontology(EFP)Clinical Practice Guidelines https://www.efp.org/