入れ歯にお悩みの方や、歯を多く失われた方へ。
オールオンフォー(オールオン4/All-on-4)の仕組みから治療の流れ、費用、長期予後のデータまで、日本口腔インプラント学会専門医が整理します。骨造成・鎮静込みの価格設計も掲載。
治療の話を読むと、余計に迷ってしまうことがあります。大切なのは”何が自分に合うか”。今日はその見極め方を、できるだけわかりやすくお話しします。
■入れ歯ではなく固定式の歯へ—オールオンフォーという選択肢
オールオンフォー(オールオン4/All-on-4)とは、1つの顎に4本ほどのインプラントを埋め込み、その土台の上に固定式の歯(上部構造)をまとめて装着する治療です。”All on 4″という名称が示すとおり、4本のインプラントで全体の歯を支えるという発想で組み立てられています。前方の2本はまっすぐ、奥側の2本は角度をつけて埋入することで、骨の量が少ない部位でも奥歯の位置まで歯を並べるよう設計されているのが特徴です。
「歯を多く失ってしまった」「残っている歯のほとんどが保存しにくい」「総入れ歯がしっくりこない」—こうしたお悩みを抱える方が、取り外しの不要な固定式の歯で噛む機能と見た目を取り戻すための選択肢の一つとして知られています。
■なぜ「固定式」が違うのか—総入れ歯との根本的な差
総入れ歯(総義歯)とオールオンフォーで決定的に違うのは、外して使うか、しっかり固定されているかという点です。
総入れ歯は、すべての歯を失った歯ぐきの上にのせて使う構造のため、「噛むとずれる」「硬いものが噛みにくい」「発音しづらい」「外れないか心配で人前で笑えない」といった負担が出てしまいがちです。これに対しオールオンフォーは、インプラントを介して顎の骨にしっかり固定されるため、こうした不安が和らぎやすいと言われます。
実際、当院でオールオンフォーの治療を進めている方の中にも、手術当日に仮歯が入ったことを機に、長らく抱えてきた入れ歯への不安から解放されたとお話しされる方がいらっしゃいます。仮歯の段階でも、粘膜と触れる部分を材料で整えるなど、きめ細やかな調整を重ねながら最終的な歯へと進めていきます(治療経過や感じ方には個人差があります)。
ただし、いくら固定式といっても、もともとあった天然の歯と全く同じ感覚になるわけではありません。極端に硬いものを噛み続けると上部構造が破折することもあり、できることと、できないことの両方を踏まえておくことが大切です。
■受けるべきか、見送るべきか—判断の目安
【向きやすいケース】
・残存歯の大部分が保存困難で、総義歯あるいはそれに近い状態が避けられない
・入れ歯の違和感・外れやすさ・見た目のお悩みが強い
・手術・通院に耐えられる全身状態がある
・治療後の定期メンテナンスに通い続けられる
【慎重に検討したいケース】
・糖尿病のコントロールが不十分/重度骨粗鬆症で治療中/喫煙量が多い
・骨量が極端に少なく、大規模な前処置が必要
・強い歯ぎしり・食いしばりが管理できていない
・通院を続けるのが難しい環境にある
・術前術後、メンテナンス期において歯科医師やスタッフの指示にご協力いただけない場合
向き・不向きの判定は、画像診断と全身状態の評価を経たうえで行います。初診の時点で「絶対できる」「絶対できない」と断言するのは適切ではありません。
■治療はどう進む?—手術から最終的な歯まで
一般的な流れを順にお示しします。
精密検査:CBCT(3次元CT)、口腔内スキャン、写真、模型、歯周組織の評価、全身状態のチェック
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治療計画と詳しいお見積もり:埋入の位置・本数・角度、骨造成の必要性、上部構造の仕様を決定し、お見積もりを提示
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抜歯とインプラントの埋入:保存できない歯を抜いたうえでインプラントを埋入。多くのケースで、その日のうちに仮の固定式の歯が入ります
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治癒を待つ期間:インプラントと骨が結合するまで、おおよそ3ヶ月〜6ヶ月前後
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最終的な歯の装着:色や形、噛み合わせを整えて装着
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継続的なメンテナンス:定期的な検診・清掃・噛み合わせのチェック
■費用の考え方—上部構造の素材で異なり、手術時の麻酔専門医による鎮静麻酔は含まれております。
オールオンフォーは自由診療で、当院において価格を大きく左右するのは上部構造(被せ物)の素材です。
ハイブリッドセラミック+チタンフレーム:片顎 295万円〜
ジルコニア:片顎 380万円〜
これらの金額には、手術と上部構造のほか、静脈内鎮静法(麻酔)と骨造成も含めて設定しています。一方で、精密検査・診断、抜歯、その他処置、一定期間を経たあとのメンテナンスについては、別途必要となります。デンタルローンに対応可能です。基本的には医療費控除もお使いいただけます。
■どれくらいもつのか—生存率データから見える長期予後
「インプラントは何年もつのか」というご質問は本当によくいただきます。インプラント全般の生存率について、研究では以下のように報告されています。
10年生存率:96.4%(システマティックレビュー、Howe et al., 2019)
20年生存率:約88〜92%(メタアナリシス、Kupka et al., 2024)—20年経過した時点でも、5本中4本以上が機能
ただしこれは、メンテナンスをきちんと継続した場合の数字です。インプラント周囲炎(インプラント周囲に起こる炎症)や上部構造の破折のために、再治療が必要となるケースもあります。長期的な予後を左右するのは、喫煙・糖尿病の管理状況・プラークコントロール(歯の清掃状態)・対顎の歯周病の管理・歯ぎしり、そして何より定期メンテナンスを続けることです。
「入れて終わり」ではなく、長く快適に使い続けるための通院を続ける—それが前提となる治療です。
【よくある思い込み】
思い込み①:4本だけなら簡単にできる治療なのでは?
→ 実際は、骨の状態・傾斜埋入の角度設計・噛み合わせの設計・メンテナンス体制がそろってはじめて、長期の安定が見込めます。難度の高い治療です。
思い込み②:手術した日から何でも普通に噛める。
→ 当日に仮歯が入っても、硬い食品は避け、やわらかめの食事から段階的に戻していきます。手術直後にインプラントが安定して見えるのは、機械的に骨へ食い込んでいるだけの状態で、本当はまだ不安定です。その後、時間をかけてインプラントと骨が結合していきます。最終的な歯までには治癒期間が必要です。
思い込み③:固定式だから手入れは楽になる。
→ 上部構造と歯ぐきの境い目の清掃がとくに大事です。ご自身の日々のケアと定期的なプロのケアが欠かせません。また、その境い目の位置はもともと天然の歯があった位置とは異なるため、慣れるまでは鏡を見ながら、あるいは意識して磨かないと、うまく清掃できないことがあります。もちろん上部構造そのものも汚れているとインプラント本体への感染リスクが高まるのでしっかりとした清掃が大事です。
他に選択肢はある?
オールオンフォーだけが正しい答えというわけではありません。
総入れ歯:費用や体への負担は小さいが、固定式ではない
多数歯を1本ずつインプラント:本数が増え、骨の造成が必要になる可能性も高くなり、費用・期間も大きくなる場合がある
インプラントオーバーデンチャー:入れ歯の下に埋めた少ない本数のインプラントで入れ歯を固定する中間的な方法
どれがふさわしいかは、骨の状態・全身状態・ご予算・優先したい点(噛み心地・見た目・通院しやすさ)によって異なります。
【FAQ】
Q. オールオンフォーは何年くらいもちますか?
A. インプラント全般の研究では、**10年生存率96.4%、20年生存率約88〜92%**と報告されています(メンテナンス継続が前提)。一方で、インプラント周囲炎や上部構造の破折により再治療が必要になることもあります。治療完了がゴールではなく、その後のメンテナンスがとても大事です。
Q. 手術した当日から噛めるようになりますか?
A. オールオンフォーでは、手術当日に仮歯が入るのが基本です。ただし、当日から何でも噛めるわけではなく、硬い食品は避け、やわらかい食事から段階的に戻します。最終的な歯までには3〜6ヶ月の治癒期間が必要で、その間にインプラントと骨が結合していきます。
Q. 費用はどれくらいですか?
A. 自由診療で、片顎295万円〜(ハイブリッドセラミック)/380万円〜(ジルコニア)が基準です。手術・上部構造に加え、静脈内鎮静法と骨造成も含まれます。精密検査・抜歯・その他処置、メンテナンスは別途で、治療前に詳しいお見積もりをお渡しします。
Q. 骨が少なくても受けられますか?
A. 骨造成で対応できるケースは多くあります。骨が極端に少ない場合は、別の設計を検討することもあります。事前のCT検査でおおよその方針を立て、手術中の所見も踏まえて最適な方法を選びます。
Q. 入れ歯とどちらを選べばよいですか?
A. 何を優先するかによります。固定式で安定しやすいのはオールオンフォーの利点ですが、外科的な負担・費用・メンテナンスの手間は入れ歯より大きくなります。見た目・噛み心地・通院頻度・費用のどれを重視するかで選択が変わります。当院ではどちらにも対応可能です。
Q. 痛みや腫れは出ますか?
A. 手術後は一定期間、腫れや痛みが出ることがあります。通常は痛み止めでコントロールできます。当院では麻酔専門医による静脈内鎮静法を用いて、手術中のご負担を軽減しています。全身管理の専門家でもある麻酔専門医とチームを組むことで、手術時の安全性を高めています。術後の経過や感じ方には個人差があります。
【安全性に関する注記】
オールオンフォーを含むインプラント治療には、感染・出血・神経損傷・上顎洞穿孔・インプラント周囲炎・脱落・上部構造の破折などのリスクがあり、結果には個人差があります。喫煙・糖尿病のコントロール状況・骨の量・全身の状態によっては、すべての方に適応できるわけではありません。費用・治療期間は目安であり、症例ごとに変動します。治療後の定期メンテナンスを続けない場合、長期的な予後が悪化することがあります。記事中の治療経過は一例であり、結果を保証するものではありません。
監修者:榊原 毅
日本口腔インプラント学会 専門医/日本包括的矯正歯科学会 副代表/インビザライン認定医/日本歯周病学会 認定医/厚労省認定臨床研修指導医(東京科学大学 歯学部)
「不安を煽らず、できること・難しいことも含めて丁寧に説明し、納得して選べる診療を心がけています。」
妙蓮寺駅から徒歩2分、横浜駅から約7分。日本口腔インプラント学会専門医と認定技工士のチームで、オールオンフォーのご相談をお受けしています。まずは現状とご希望を伺うところから始めます→(https://d-sakaki.com/)
【参考文献】
日本口腔インプラント学会『口腔インプラント治療指針 2024』 https://www.shika-implant.org/
Howe MS, et al. Long-term (10-year) dental implant survival: A systematic review. J Dent, 2019. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30904559/
Kupka JR, et al. A 20-year meta-analysis of dental implant survival rates. Clin Oral Investig, 2024. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39305362/
Maló P, et al. The All-on-4 treatment concept: A long-term retrospective study. Clin Implant Dent Relat Res, 2019. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30589506/
Soto-Peñaloza D, et al. The all-on-four treatment concept: Systematic review. J Clin Exp Dent, 2017. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28828167/
European Association for Osseointegration (EAO) https://www.eao.org/
International Team for Implantology (ITI) https://www.iti.org/
国税庁「医療費控除の対象となる医療費」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1122.htm